| 更生 ８巻102頁より |
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「あんた、文秀様とは昔からの知り合いなんだろ？昔もあんな……」 「……強かった」 「は？」 木に背中を持たれかけ、腕を組み、遠いどこかを見るような目をして元述は言葉を続ける。 「精力の強い方だった。絶倫といってもいい。 あの頃は俺はあっちの知識に関してはあまりにも何も知らないガキで、 そんな俺に昼夜を問わず、場所を問わず、あんな事やこんな事を手取り足取り丁寧に教えてくれたものだ。 ただ、あまりにも激しくて、こちらの足腰が立たなくなる事もしばしばで…」 ズドン。 音とともに左胸に穴が空く元述。 見ると右手に常に隠し持っている銃を元述に向けて文秀が立っている。 「思いっきり誤解を招くような、つぎはぎのごちゃ混ぜな言い方はやめろ！ 兵法の手ほどきと、剣の稽古の相手をしてやっただけだろ！」 「危ないですね。死んだらどうするんですか」 なぜあんな遠い所からこちらの話が聞こえたのか？という疑問を一瞬顔に浮かべたあと、 その事には触れずに元述は落ち着いた様子で文秀に抗議の声を上げる。 「お前は既に死んでいるだろ、…いや、こういう場合はどうなんだ…って 房子、なんだその目は。おまえも変な誤解をしてるんじゃ…」 会って間もないものの、先日の、死人の金の件などの元述の生真面目さを目の当たりにしている 房子は じと〜っと主人に疑いとかすかな蔑みの目を向けている。 「クックック」 その様子に心底おかしげにこぶしを口元に寄せて笑いをかみ殺す元述。 「元述、お前、俺の事嫌いだろ」 「ですから先程からそう言ってるじゃないですか」 平然と即答する元述に文秀は天を仰いで嘆息交じりにつぶやく。 「昔はもう少し可愛い奴だったのに…」 更生((1)立ち直ること。好ましくない精神状態や生活態度から、かつてのよい状態に戻ること／大辞林第二版)と書いて甦る。だが、どちらかというと逆更生している元述であった。 (040820) |
| 蛇足 そして、最後の文秀のセリフと、例の胸ペタシーンで御史と元述の関係に対する疑惑が更に深まる房子であった（笑） 普段まじめな人が嘘をつくと効果絶大。 |