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征服したいもの
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「マルレーネ、なぜ君は女だてらにこんな所へ、東洋などへ来ようなどと考えたんだね」 「この国に興味がありまして」 マークの、本国ならば差別発言で訴えられかねない言葉を、 マルレーネは内心はともかく表面は貴族としての洗練された笑顔で返す。 「貴方も命令ばかりではないでしょう。この地へいらっしゃったのは。 欲しい物があってこの地に赴かれた。違いますか？ 貴方が得たいのは、少々寒冷ではあるものの、広大で実り豊かな土地ですか？ それとも東洋特有の香、薬、陶器もしくは螺鈿等の細やかな細工が施された数々の宝物？」 「それらもたいそう魅惑的ではあるが、私が一番欲しいのはあの土地で最も尊い宝だ」 そうつぶやくマークの目は空に向けられ天にます彼らの神への切望に満ちている。 「と、いうと」 「決まっているじゃないか！高貴な血を受け継いだあの美しくも誇り高いかの者だよ！ 黒曜石のきらやかな瞳に象牙の肌色…」 「…平岡とかいう領主の娘ですか？」 「馬鹿な！なぜあのような小娘を」 白サギをカラスと間違えられたかのように憤慨するマーク。 「え？では…」 我々が出会ったこの土地の人間で、身分の高い人物というと…と マルレーネが頭を巡らす間も与えずにマークは即答する。 「彼だよ彼、領主本人さ！ ああ、思慮深げな横顔に少し痩せぎすで過労のたゆたうどことなく影のある外見、 年月を経て刻まれた皺がそれらに更に色気を添えていて。 あの頂点でまとめた艶やかな髪を下ろせば黒と銀の絶妙な配合が まるで夜空のミルキーウェイのようにあのか細い肩に流れ落ちて… ファンタスティック！あれこそ東洋の神秘！是非欲しい！」 そういって肥満気味の自らの体を抱きしめて身悶える。 「…詩人ですね、大佐。 （そうか、好色そうな雰囲気にしては私に何の害もないと思ったらそっちか…）」 おわり(050520) |