月亮 2

月が欠けていく。
満月から下弦、三日月から新月へ。


文官の噂は結果として現実となった。
彼が陛下をその手で殺す事によって。

『それ』は目の前で起こり、
私が信じていたものを、無理矢理奪い取っていった。
将軍に対する信頼、期待、希望を。
ありとあらゆるものは崩れ去り、
何もかもを失った私はただその場で、呆然と立ちすくむだけだった。

阿志泰様がその手を私に差し伸べるまで。


信じていた全てが消し去られて、からっぽになった私の心に代わりに生じたのは
彼に対する怒り、恨み、そして憎しみだった。

彼は我々の信用を裏切ったのだ!
彼は我々を見捨てたのだ!
彼は!彼は!!彼は!!!


もし将軍が解募漱様に反乱を起こしたら、私は彼の味方をする、
以前私は確かにそう、考えていた。
だけど、私が付き従いたかったのは、
不穏な態度を取りつつも、本当は誰よりも聚慎の事を考えていたあの将軍だけだ。

我ながら矛盾している、それはわかっている。
まさか、現実にそれが起こるとは思わなかった。
まさか、本当に将軍が親友たる聚慎の王を殺すなんて、
そして我々が命を懸けて作り上げてきた一切を壊してしまうなんて、思いもしなかった。
だからこそ私は。

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