◆御都合主義とお約束 メタルスライム出没地域でレベル上げに努める、つもりが…… 「うわっ！」 「どうした！その声は元述か！」 あいつは体力的にかなりやばいはず。まさか魔物の攻撃を受けてくたばちまったか？ 文秀はいつ現れるか分からない敵の気配を探りながらも、 元述を回復してやれなかった事を後悔する。 程なく濃い霧の向こうからふらりと現れる影は。 「ああ、無事だったか、元述」 緊張を解いて近づく文秀に、いきなり元述は剣を横なぎに振る。 とっさに盾で剣撃を避けた文秀だが、防いだ盾を飛ばされてしまう。 「元述、お前！？…ち、そうか、もう一体の幻術師のメダパニ（混乱魔法）を… 元暁！阿志泰！」 深い霧で見えないが、確実にこの付近にいるはずの二人に呼びかけるが 返ってくるのは呪文の詠唱や魔法による爆音のみ。 「自分でどうにかしろってか」 正面を向き直し、敵の魔法によって分別を失ったであろう元述をにらみつけて、 それでも文秀は不敵な笑いを口に浮かべる。 「本気のお前と正面きって戦っても勝てねぇからな」 文秀はその視線を元述から外さずに、肩から下げた道具袋を探る。 魔物の体に巻き付き、動きを鈍らせるあの魔法の道具を使えば… 「捜し物はこれですか」 丁寧な口調だけは変わらぬ元述の手にはいつのまにか件の道具たる斑蜘蛛糸が。 「なっ」 「驚く事はありません、はじめの一撃はこれが狙いだったんですから」 よくよく見れば道具袋には横に長く裂け目が走っている。 メダパニを食らうと分別を失うなどと言ったのはどこのどいつだ！ 目の前のこいつは冷静そのものじゃないか。 「元述まさかお前」 返事の代わりに元述の顔に浮かんだ笑顔は殺気に満ちた刃物のようで。 やはりこいつは正気じゃない、逃げ回って時間を稼ぎ、他の奴等の助けを待とう。 文秀は頭の中でそう結論づけ、後ずさろうとしたが その足には既にネバネバとした蜘蛛の糸がまとわりつき始めている。 慌てて剣で糸を断ちきるがそれを上回る糸の量に追いつかず、 まるで生き物のように文秀の体を這い回り手足をがんじがらめにしようとする。 その間にも元述の攻撃は止まず、鎧を固定する留め金やベルトを正確に断ち切り、 装備を削り取っていく。 こいつ、一気に俺を殺す事だってできるのに、 こんなジワジワと痛めつけ恐怖を煽るようなやり方で。 文秀は剣だけでその攻撃をかわそうとするものの、 蜘蛛の糸によってゆっくりと体の自由を奪われ、 鎧どころか衣服すら切り裂かれ、体の表面に一本、また一本と傷を刻まれる。 元述の矢継ぎ早の攻撃によって糸全てを断ち切ることも出来ずに 両足と両腕を縛り上げられ、体の均衡を崩して前のめり、 天下の無敗将軍もとうとう地面に倒れ込む。 「くそっ」 うつ伏せからすぐに仰向けに体を回転させ、上半身を起こして体勢を直すも間に合わず 元述の接近を許して、組み敷かれ馬乗りにされる。 「無様ですね、将軍」 元述はどこか悲しげな顔でつぶやき、剣を元上官の喉元に構える。

　

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腐女子様ご一行は こちらへどーぞ（笑）